『ボクたちはみんな大人になれなかった』(著:燃え殻)読了

話題の本に飛びついてみた。長い歌詞みたいな小説だった。歌詞ってだいたい情報足りなすぎて想像するしかなくて、精一杯自分の経験から情景を構築してみたりするじゃない。だから、たぶん君と僕とでは思い描くこと感じることは違ってあたりまえだと思う。燃え殻さんはそんな感じの描き方をする。でも語られるささいなできごとが、あまり他人ごととは思えない。直接的にほんとうの感情を口にしない。だから勝手に自分ごとにひっぱりこんでしまうんだろう。あとはね、ときどき、自分に対してだけ圧倒的な説得力を持つんじゃないかと感じられるような一節が表れてはっと息をのむ。それは単なる何かものの描写だったりするんだけど、その文脈で登場したその「もの」は明らかに悲しさやなんかの表象で、そうだ、こんなときって、そういうものを見ることで激烈に悲しくなったりするんだよな、そんなことみんなにわかってたまるかよ、でもけっこう、似たようなものを隣の人も見出してたりして。

ボクたちはみんな大人になれなかったと言いつつも、身体ばかりは老けてゆくし、社会の一部になってゆくやりきれなさ。一方で本当に忘れられないことがある。しかし四十過ぎても一向に忘れられないことならば、美化もせず風化もさせず、ただもう抱きしめて生きていくしかないんじゃないか。そしてそこからいつだって勇気をもらえるなら、もう無敵かもしれないし。もらえるのは必ずしも勇気ばかりじゃないかもしれないけど、困った時に立ち返る原点か、チェックポイントとして人生に永遠に刻まれる道標になってしまうなら、きっと悲しいことばかりではない。いつまでもそこにとらわれてもいけないかもしれないんだけど、そういう過去を抱いて生きることと、大人になることはちゃんと両立すると思う。というか、そうしないといけないんだよ。20年後にはどうなっているだろう。